2023-04-12
頭蓋内圧や脳圧の亢進、または頭蓋内高血圧の症状をお持ちの方が頻繁に来院されています。目の奥から頭痛が発生したり、心臓の鼓動に合わせて聞こえる拍動性耳鳴りがあったり、悪心、嘔吐、めまいを訴えられます。一晩中横になっている姿勢では脳浮腫がさらに悪化する可能性があるため、朝起きる時に頭痛があり、咳をする時や頭を下げる時のように頭蓋内圧を増加させる行為によって頭痛がさらに悪化するともおっしゃいます。また、首、肩、背中部位の痛みが多く、視神経浮腫による羞明や目のかすみといった眼症状を伴い、耳鳴り、ジストニア、斜頸、後頸部痛などの症状を訴えられます。
「頭と耳から水が流れる音、泡がボコボコする音が聞こえ、頭痛がだんだんひどくなります。」
「水が溜まる感じ、頭を圧迫する感じがして、めまいがして力が抜け、泡が弾ける音が耳と鼻から聞こえ、体のあちこちがピクピクして震える症状があります。」
頭部外傷、血栓、感染、腫瘍は頭蓋内圧を亢進させる原因となり得ますが、検査を通じてこのような問題が発見されなければ特発性頭蓋内圧亢進症(idiopathic intracranial hypertension)または偽脳腫瘍と診断されることになります。つまり頭蓋内圧を上昇させる明確な原因が不明という意味です。特発性頭蓋内圧亢進症で見られる悪心、吐き気、食欲不振、眼・視野症状、耳鳴り、頭痛、頸部痛や筋緊張異常、認知障害のような症状が脳腫瘍による症状と類似しています。しかし実際の腫瘍がなく、脳脊髄液が頭蓋内に蓄積して圧力が高まるのが違いです。
頭蓋内圧上昇が持続すると脳神経細胞死と脳実質の萎縮へ進行
静脈血排出が遅くなると頭蓋内静脈血と脳脊髄液が蓄積し、頭蓋内圧上昇につながります。頭蓋内圧亢進は徐々に大脳皮質に灌流する血流量を減少させ、脳神経細胞の死と脳実質の萎縮へ進行することになります。
- 脳脊髄液停滞
- 脳実質に毒性代謝産物の蓄積
- 頭蓋内圧力上昇により静脈管が狭くなる
- 毒性代謝産物蓄積と頭蓋内圧力上昇がさらに悪化する悪循環
- 脳に供給される動脈血減少
- 脳神経細胞の死が始まる
- 脳萎縮が始まる
- 静脈血排出が改善されない間、脳組織の損傷が持続する
頭蓋頸椎不安定性は頭蓋内圧上昇の隠れた原因となり得る
2016年に発表された「Monro-Kellie 2.0: The dynamic vascular and venous pathophysiological components of intracranial pressure」では、頭蓋内圧上昇要因を下表のように分類しました。頭蓋骨折、脳腫瘍、血栓などによる頭蓋内静脈の圧迫、狭窄、遮断が要因となり得、頭蓋外の頸椎、胸部、腹部の静脈圧が高まることが要因となり得ることを示しています。


頭蓋内静脈流を遮断する頭部外傷、血栓、感染、腫瘍のような要因なしに頭蓋内のtransverse sinus(横静脈洞)の静脈流が停滞して頭蓋内圧が上昇する状況は、頭蓋底と上部頸椎の不安定性による内頸静脈(Internal jugular vein)の圧迫が一般的な原因となります。下図はtransverse sinus、sigmoid sinus(S状静脈洞)、internal jugular veinに頭蓋内静脈血が集まって頭蓋外に出ていく流れを示していますが、頭蓋底と上部頸椎領域の異常な構造により静脈血の排出が遅くなったり遮断されたりする可能性があることを示しています。

特発性頭蓋内圧亢進はその症状が多様に現れるため、診断が容易ではありません。そのため副腎と甲状腺ホルモン、肥満、薬物副作用、貧血、自己免疫問題など内分泌系統、心血管系統、自己免疫問題について多様な検査を経験することがあり、CT、MRI、脊椎穿刺で脳脊髄液の圧力を検査されることがあります。診断に従って薬物処方を通じて頭蓋内圧亢進が解消されることもあり、薬物治療でも緩和されなければ外科的方法を通じて症状が緩和されることもあります。しかし長期間このような治療でも症状が緩和されなかったり再発が繰り返されるなら、見逃された原因があるかもしれません。


頭蓋頸椎の構造的変形は頸椎靱帯の弱化を誘発し、これにより頸椎分節があちこちに変位したり頸椎カーブの変形を作って神経、静脈、動脈を圧迫したり牽引させ、多様な神経学的症状、血流障害症状を引き起こすことになります。頭蓋頸椎不安定性による頸椎分節の変位と頸椎カーブの変形は、頭蓋内圧亢進を誘発する隠れた原因となり得ます。